ラーメン構造の問題では剪断力図や曲げモーメント図を書く(選ぶ)問題が出題される可能性があります。
この問題を解くには、まず単純梁の剪断力図と曲げモーメント図を理解している必要があります。
今回はラーメン構造の剪断力図、曲げモーメント図の前に、単純梁に関する剪断力図、曲げモーメント図について書いていきます。
梁に掛かる荷重の種類として
①集中荷重
②分布荷重
③モーメント荷重
の三種類があるので、軸力、剪断力、曲げモーメントについてもそれぞれの荷重のタイプごとに書いていきます。
①単純梁に集中荷重が作用した時の
1)反力を求める
2)軸力、剪断力、曲げモーメントを数式化する
3)軸力図、剪断力図、曲げモーメント図を書く
②分布荷重が作用した時の1)~3)
③モーメント荷重が作用した時の1)~3)
以上①→②→③の順に進めていきます。
まずそのまえに、ルールとして、軸力(N)、剪断力(Q)、曲げモーメント(M)のプラス・マイナスは以下の図のように決められているので、覚えておきましょう。
図-1 軸力のプラス・マイナス(引張が(+)、圧縮が(-))
図-2 剪断力のプラス・マイナス
図-3 曲げモーメントのプラス・マイナス
①単純梁に集中荷重が作用した場合
図-3 のような場合を考える。
①-1)反力を求める
前提として水平方向の力、鉛直方向の力、モーメント力は釣り合っているので、$$\begin{split}\sum{H}&=0\\ \\ \sum{V}&=0\\ \\ \sum{M}&=0\end{split}$$
水平方向の力は作用していないので省略。
鉛直方向については$$V_A+V_B-P=0・・・①-(1)$$
モーメント力については支点Aから考えて$$100[kN]\times6[m]-V_B[kN]\times(6+4)[m]=0・・・①-(2)$$①-(1)と①-(2)より$$V_A=40[kN]$$ $$V_B=60[kN]$$
①-2)軸力、剪断力、曲げモーメントの数式化
ルール:仮想切断の形は+の形状として数式化する。
◆軸力(N)$$\sum{X}=0 : 0+N=0\quad(図-3の場合、軸方向力が作用していない)$$
◆剪断力(Q)$$\begin{split}\sum{Y}=0 : V_A-Q&=0\\40-Q&=0\\Q&=40\quad(Aから0m \leqq{x}\leqq6m)\\ \\Q+V_B&=0\\Q+60&=0\\Q&=-60\quad(Bから0m\leqq{x}\leqq4m)\end{split}$$(Aから6mの位置で剪断すると剪断部の右側断面が現れ、その部位には下向き(-)の力が作用していることになる。またB点から4mの位置の剪断面では上向き(+)の力が作用していることになる)
◆曲げモーメント(M)$$\begin{split}\sum{M}=0 : 40x-M_{A}&=0\\M_{A}&=40x\quad(Aから0m \leqq{x}\leqq6m)\\ \\-60x+M_{B}&=0\\M_{B}&=60x\quad(Bから0m\leqq{x}\leqq4m)\end{split}$$(Aから6mの位置で剪断すると剪断部の右側断面が現れ、その部位には反時計回り(-)のモーメント力が作用していることになる。またB点から4mの位置の剪断面では時計回り(+)のモーメント力が作用していることになる)
①-3)軸力図、剪断力図、曲げモーメント図を描く
◆軸力図(N図)
図-3のパターンでは軸力が作用していないので、省略する。軸力図の例は後述する。
◆剪断力図(Q図)
剪断力の数式より荷重の作用点を境に $Q_A=40$ と $Q_B=-60$ の傾きのない水平の直線で表される。また、図‐4 のように作図することもできる。
◆曲げモーメント図(M図)
曲げモーメント図は軸力図、剪断力図とことなり梁を示す直線よりも下側を(+)域、上側を(-)域とするので間違わないように注意する。
上述のように曲げモーメントの数式はそれぞれ支点A、支点Bから荷重作用点に向かっていくので、X軸の方向が逆向きになっている。
点Aから 0m ≦ x ≦ 6m の範囲では点Aから荷重作用点に向かって、傾き40の直線となる(+は下側なのに注意する)。荷重の作用点での曲げモーメント値は240[kN・m]。
点Bから 0m ≦ x ≦4m の範囲では点Bから荷重作用点に向かって、傾き60の直線となる(x軸の方向が逆になることに注意する)。荷重の作用点での曲げモーメント値は240[kN・m]。
また、次のように作図することもできる。
点Cに両端から作用するモーメントは釣り合っておりモーメント値は同じになるので、どちらかの端点から荷重作用点への曲げモーメント値を求め、図の荷重 点の位置に記入する、その点から両端に直線を引く。
以上を図-5 にまとめる。
~軸力図について~
【例1】図-6のような、10[kN]の軸方向の外力が図のように作用している場合
図-6 軸方向力が梁の端部から軸方向と平行に外力が作用している場合
(1)反力を求める
水平(X)方向の反力(H_A)は10[kN]
(2)軸力を数式化
$$\begin{split}\sum{X}=0 : H_A+N&=0\\ \\10+N&=0\\ \\N=-10[kN]\end{split}$$
(3)軸力図を描く
図より軸方向の外力はB点からA点にわたり部材全体に作用しているので、
図-7 図-6 に対する軸力図
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【例2】下図のように、外力が斜めに梁の中央に斜め方向に作用している場合
図-8 梁の途中に斜め方向に外力が作用する場合
(1)反力を求める
外力のうち、軸に平行な成分を求めると図より8[kN]であることが分かる。$$\because10[kN]\times\frac{4}{5}=8[kN]$$従って水平反力も8[kN]となる。
(2)軸力を数式化
$$\begin{split}\sum{X}=0 : H_A+N&=0\\ \\8+N&=0\\ \\N=-8[kN]\end{split}$$
(3)軸力図を描く
軸方向の外力の作用点はC点であるから、A点からC点とC点からB点に分けて考えると、軸方向力はC点からA点に向かって作用しているが、C点からB点の間には作用していない。
従って軸力図は
②単純梁に分布荷重が作用した場合
図-6 のような場合を考える。
②-1 )反力を求める
分布荷重の場合、荷重の合力は梁中央部に作用していると考える。
従って、合力$P=10[kN/m]\times10[m](=100[kN])$。
軸方向の反力:水平方向の外力が無いので省略する。
鉛直方向の反力:$\sum{Y}=0$
$$V_A+V_B-100=0・・・②-(1)$$
モーメントの反力:$\sum{M}=0$
$$100[kN]\times5[m]-V_B\times10[m]=0・・・②-(2)$$
②-(1)、②-(2)より$$\begin{split}V_A&=50[kN]\\ \\V_B&=50[kN]\end{split}$$
②-2)軸力、剪断力、曲げモーメントの数式化
A点から$x$[m]の位置で仮想切断する(ルールより、仮想切断部の形はそれぞれの符号が+と設定すること)。
仮想切断した部分は下図の通りである。
下図に則り、軸力、剪断力、曲げモーメントを数式化する。
図-11 図-10 の梁を任意の箇所で仮想切断した時の概念図
◆軸力(N):作用していないので省略
◆剪断力(Q):$\sum{Y}=0$
$$\begin{split}V_A-qx-Q&=0\\ \\Q&=-qx+V_A\\ \\Q&=-10x+50・・・②-(3)\end{split}$$
◆曲げモーメント(M):$\sum{M}=0$
$$\begin{split}V_A\times{x}-qx\times\frac{x}{2}-M&=0\\ \\M&=-\frac{q}{2}\cdot{x^2}+V_{A}\cdot{x}・・・②-(4)\end{split}$$
②-3)N図、Q図、M図を描く
◆N図:軸力は作用していないので省略
◆Q図:②-(3)式より、A点($x=0[m]$)では$$Q_{x=0}=50[kN]$$
梁中央($x=5[m]$)では$$Q_{x=5}=0[kN]$$
B点($x=10[m]$)では$$Q_{x=10}=-50[kN]$$
以上よりQ図は下の通りになる。図-12 分布荷重が作用している梁のQ図
◆M図:
(※M図は他と違い、上側が-領域、下側が+領域であることに注意!)
②-(4)式より下に凸の2字曲線(放物線)になる。
A点($x=0[m]$)では$$M_{x=0}=0[kN\cdot{m}]$$
梁中央($x=5[m]$)では$$M_{x=5}=125[kN\cdot{m}]$$
B点($x=10[m]$)では$$M_{x=10}=0[kN\cdot{m}]$$
以上よりQ図は以下の通りになる。
③単純梁にモーメント荷重が作用した場合
図-14 に示す単純梁にモーメント荷重が作用する場合を考える。
図-14 モーメント荷重が作用する単純梁
③-1)反力を求める
水平反力は省略する
鉛直反力:$\sum{Y}=0$より
$$\begin{split}V_A+V_B-P&=0\\ \\V_A+V_B&=0・・・③-(1)\\ \\ \because{P=0}\end{split}$$
モーメント:$\sum{M}=0$より$$100[kN\cdot{m}]-V_B\times{10[m]}=0・・・③-(2)$$
③-(1)、③-(2)より
$$\begin{split}V_B&=10[kN]\\ \\V_A&=-10[kN]\end{split}$$
③-2)剪断力、曲げモーメントを数式化する
モーメント荷重がC点(A点から6mの位置)に作用しているので、C点で分割して考える。
図-15 にC点で仮想切断した図を示す。
図-15 図-14 の梁をC点で仮想切断
◆剪断力(Q)
$\sum{Y}=0$
A点~C点の範囲について
$$\begin{split}V_A-Q_{A-C}&=0\\ \\Q_{A-C}&=V_A\\ \\Q_{A-C}&=-10[kN]\end{split}$$
ただし $0[m]\leqq{x}\leqq6[m]$
B点~C点の範囲について
$$\begin{split}V_B+Q_{B-C}&=0\\ \\Q_{B-C}&=-V_B\\ \\Q_{B-C}&=-10[kN]\end{split}$$
ただし $0[m]\leqq{x}\leqq4[m]$
◆曲げモーメント(M)
$\sum{M}=0$
A点~C点の範囲について
$$\begin{split}V_A\cdot{x}-M_{A-C}&=0\\ \\M_{A-C}&=V_A\cdot{x}\\ \\M_{A-C}&=-10x[kN\cdot{m}]\end{split}$$
ただし $0[m]\leqq{x}\leqq6[m]$
B点~C点の範囲について
$$\begin{split}-V_B\cdot{x}+M_{B-C}&=0\\ \\M_{B-C}&=V_B\cdot{x}\\ \\M_{B-C}&=10\cdot{x}\end{split}$$
ただし $0[m]\leqq{x}\leqq4[m]$
③-3)Q図、M図を描く
◆Q図
剪断力の式より(図-16)
図-16 モーメント荷重が作用している単純梁のQ図
◆M図
曲げモーメントの式より
A点からC点の範囲について(A点が0[m]点)
$$M_{A-C}=-10\cdot{x}$$
($0\leqq{x}\leqq6$)
$$\begin{split}M_{A-C, x=0}&=0[kN\cdot{m}]\\ \\M_{A-C, x=6}&=-60[kN\cdot{m}\end{split}$$
B点からC点の範囲について(B点が0[m]点、$x$軸の方向がA-C間と逆になる)
$$M_{B-C}=10\cdot{x}$$
($\leqq{x}\leqq4$)
$$\begin{split}M_{B-C, X=0}&=0[kn\cdot{m}]\\ \\M_{B-C, x=4}&=40[kN\cdot{m}]\end{split}$$
以上を図示する(図-17)
図-17 モーメント荷重が作用している単純梁のM図