鉄骨製作管理技術者1級受けてみた(その3 バリニオンの定理)

 今回は、構造力学の基礎で必ず登場するバリニオンの定理について、書いていきます。

 バリニオンの定理(Varignon’s Tehorem)とは、数学の世界では「あらゆる四辺形において各辺の中点を結んで得られる四辺形は必ず平行四辺形になる」という定理で、物理においては、合力のモーメントは分力のモーメントの総和に等しいというもの。

 この二つがどういう風に結びつくのかは、お好きな方は考えて、いつか教えてください。今回は、1級鉄骨製作管理技術者の試験に出てくる程度のレベルで勘弁してください。

【バリニオンの定理の証明】

手始めに...
下の図において、

 点イが力「ア→ウ」から受けるモーメントは「アウの大きさ」×「点イまでの垂直距離 オイ」で表されます。
 これは平行四辺形アウイキの面積でもあります。
 また、直線アイはこの平行四辺形の対角線であり、これによって平行四辺形アウイキの面積は二等分されます。
 次に点イより対角線アイに垂線イカを引きます。
 点ウからイカに垂線を降ろし、脚をカ’とします。さらにこの垂線を延長して、点アが垂線を降ろし、脚をエとすると長方形アイカ’エが得られます。
 三角形アイウと長方形アイカ’エは辺アイが共通です。また、三角形アイウの面積はアイ×イカ’÷2で表されます。三角形アイウの面積は長方形アイカ’エの面積の1/2です。
 つまり、平行四辺形の面積とその対角線を一辺として得られる長方形面積は等しいことが分かります。

 このことを利用して、力PとQおよびそれらの合力R、それらからのモーメントを受ける点Oを考えます。
 点Oが力Pから受けるモーメントMは力Pの大きさとその作用線からの垂直距離の積であるので、平行四辺形AbOeの面積となります。
 また、これは長方形AOb’b’’の面積でもあります。
 同様にして点Oが力Qから受けるモーメントMと、点Oが合力Rから受けるモーメントMを表現すると

=OA×Ob’
=OA×Oc’
=OA×Od’

「バリニオンの定理は正しい」という命題を立てると、

=M + M   であるので、
OA×Od’=OA×Ob’+OA×Oc’
=OA×(Ob’+Oc’)・・・(1)

 図より、Od’=Ob’+Oc’であるから

(1)式は成立し、バリニオンの定理が正しいとする命題は真であることが分かります。

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 ではいくつか問題を解いてみましょう。

【問題1】 図のような天秤がある。支点xはどの位置で釣り合うか。

【答1A】 モーメントの釣り合いで考えると

Pからのモーメント
MP=-20 [kN] × x [m]
MQ=30 [kN] × (10-x) [m]

釣り合っていれば
MP+MQ=0 なので

-20x+30(10-x)=0
50x = 300
x = 6 [m]

【答1B】 バリニオンの定理を使うと

支点Oを力Pの作用点に設定する。
PとQおよび合力Rは同一方向なので単純に和を求めれば良いので、

R = 50 [kN] である。

Pから点Oへのモーメント MPO
MPO=20 [kN] × 0 [m]
=0 [kNm]

Qから点Oへのモーメント MQO
MQO=30 [kN] × 10 [m]
=300 [kNm]

合力の作用点は分からないので点Oから作用点までの距離をx [m] とすると
MRO=50x [kNm]

バリニオンの定理より

MRO=MPO+MQO
50x = 300
x = 6 [m]

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【問題2】 図のような直行する力PとQが点Aに作用している。P,QのモーメントMP、MQおよび合力RからのモーメントMRを求めて、バリニオンの定理が成立していることを確かめなさい。

【答2】

MP=30×1.5 [kNm]

MQ=-40×2 [kNm]

直角三角形の三辺の比からRの大きさは50kNであることが分かる。
また、図中の ⊿Oa’r’ および ⊿Arr’ も辺の比が3:4:5の相似形であるから、a’r’ の長さは

1.5×3/4=1.125m

Ar’=2-1.125
=0.875m

点AのRの作用線からの垂直距離Arは

Ar=0.875×4/5 であるから
Ar=0.7 [m]

点AはRより反時計回りのモーメントを受けるので、符号はマイナスとなり、

MR=50 × 0.7 × (ー1)
= ー35 [kNm]

MP+MQ=45ー80
=ー35 [kNm]

よって、バリニオンの定理が成立している。

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 ちなみにバリニオンの定理(任意の四辺形の中点云々)については以下の様に証明できます。

 四辺形ABCDの辺AB、BC、CD、DAの中点をE、F、G、Hとする。
 ここで、三角形ABCとEBFに着目すると、これらの三角形において頂角Bは共通であり点EおよびFがそれぞれ辺AB、BCの中点であることから、辺AB:BCと辺EB:BFの比は等しい。
 頂角が等しく、且つその頂角で交わる二辺の長さの比が等しい二つの三角形は相似形であるから、辺ACとEFは平行である。
 同様に三角形ACDとHGD、三角形ABDとAEH、三角形BCDとFCGについても同様であるから、四辺形EFGHは平行四辺形である。

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