今回は、この資格に絡む鉄骨構造(構造力学)についてです。
まず、試験に出そうな鉄骨構造の問題としては
①トラス構造に関する軸力(当該部材について引張力がかかるか圧縮力がかかるか)を問う問題。
②ラーメン構造に関するせん断力図、曲げモーメント図の問題
③単純梁、片持ち梁の曲げモーメント”M”、たわみ、せん断力に関する問題。
④各種形鋼の特性と用途
⑤十分な強度を持たせるための方法
です。
まず、基礎の基礎として「力の分解と合成」と「モーメント」について書いていきます。
【スカラーとベクトル】
力は大きさと作用する方向をもった物理量をベクトル量と言い、ベクトル量に対して方向を持たないものをスカラー量と言います。
重量(重さ)は物体を作用点として、鉛直へ向かう方向と質量を持つベクトル量、質量は方向に関わらないスカラー量です。
ベクトル量である力は任意の方向の力に分解できるし、同じ点に作用する複数の力を合成することもできる。
ワンポイント 「平行四辺形」と「経路によらず終点は同じ」がツボ!
【分力と合力】
①作用点が同じ、力の分解と合成
平行四辺形を用いて力を二つに分解してみる。
例えば、黒い矢印で表した力がある。矢印の大きさが力の大きさ、矢印の向きが力の方向(作用線)、矢印の起点の〇が作用点を示している。
この力を二つの力に分解した分力の一つを赤い矢印で示した。
ではもう一つの青い分力はどうなるか。
分解される前の黒い力が赤い分力と青い分力とからなる平行四辺形の対角線になるように図を描けば良いから...
こんな感じ。
反対に赤い力と青い力を合成するには、分解の逆を行えば良い。
こんな感じ...
次に、力を三つ以上に分解してみる。
まず、平行四辺形を使って分解してみる。
赤色の分力と緑色の分力はこのような大きさと方向だとすると、青色の分力はこうなる...
これを逆回しにすれば合成になる。
力の多角形を利用すると
分力と始点にもう一つの分力の終点をくっつける。
同じようにしていく。分かっている分力の終点と、元の力の終点を結べば
求めたい分力の大きさと方向が分かる。最後にそれぞれの分力を作用点に平行移動する。
では合成はどうする
この逆の道筋をたどる。
それぞれの分力を終点と始点をつなげるように平行移動して、
最初の始点と最後の終点を結べば良い。
あるいは、
厳密にいうと、力の作用線を平行移動できる理由は、力の作用する物体を「点」として扱うからで、大きさを考慮した場合は「点」ではなく「剛体」となり、作用線は作用線の延長線上しか移動できなくなる。
後に書くが、モーメントを扱う問題では剛体の回転を止めるために作用線を平行移動させるものがある。
【モーメント】
モーメントは物体を曲げたり、回転させようとする力です。
モーメントの定義は
力(単位:N「ニュートン」)×距離(単位:m「メートル」)
なので、モーメントの単位は Nm「ニュートンメートル」となります。
モーメントの計算例
図のように、どんなに力をかけても決して変形しない長さLの棒を点Aに絶対に滑らないようにセットして力 P を図のように作用させたとする。
(1)と(2)では点 A に作用する力は P で同じ、Nの作用点と点A間の距離もLで同じだから、点Aに作用する曲げモーメントは同じように思える。
答えは...
(1)は棒に対して力は直角方向に作用している。
(2)では棒に対して45°方向に作用している。
力の作用する方向と棒の軸方向が同じであれば点Aには曲げモーメントは生じない。
(1)では棒に対して直角に作用しているので、棒の軸方向への力は存在しない。
(2)では棒に対して直角ではないので、力を棒の軸に対して直角の方向と棒の軸と同じ方向の力に分解される。
このうち、曲げモーメントに関わる力は棒の軸に対して直角方向の力だけである。
(2)の力Nを棒の軸方向と棒の軸に直角方向の力に分解する。
図より傾きは45°なので棒の軸に直角に作用する力は0.7N(1/√2)だとわかる。
従って、点Aに作用する曲げモーメントは
(1)では M(1)=P×L[Nm]
(2)では M(2)=0.7P×L[Nm]
となる。
モーメントは物を回転させようとする力、回転させようとするということはモーメントが作用するもののどちらか一方の端を固定すると「曲がる」ことになるので、曲げモーメントともいう。
時計周りでも、反時計回りでも、モーメントの値は同じなのか?
回転方向には回転軸方向から見て、時計回りと反時計回りの2種類あり、決め事として、反時計回りのモーメントにはマイナス(-)を時計回りのモーメントにはプラス(+、ふつうは省略する)をつけることになっている。
モーメントのつり合い問題
図のように長さが3mのたわむことのない天秤棒の左側の端に10 ㎏の重り、右側の端に20 ㎏の重りをとりつけた時のつり合いを考えたとき、左端から何メートルの位置に支点を持ってくれば釣り合うか。
支点には、左側にはM(左) = 10 ㎏ × X m のモーメント、右側にはM(右) = 20 ㎏ × (3-X) m のモーメントが作用しており、なおかつ釣り合っている状態なので、
10X = 20 × (3-X)
が成り立つ。
これを解くと X=2m
今回は、この辺で。次回は、バリニオンの定理です。