今回は、角にRを持つ角型鋼管について、溶接線はどこからどこまでか、ということと、角部の内部欠陥の実際の長さの計算方法について書いていきます。
ご存じのとおり、冷間成形角型鋼管には大きく分けてロール成形材のBCRとプレス成形材のBCPの2種類があります。
形状的な違いは角部の曲率半径でBCR材では曲率半径は板厚の2.5倍、BCP材では3.5倍と決められています。
BCR、BCP材とも一つの溶接線は曲面の終わりから始まって、隣の曲面の終わりまでです。わかりにくいので図で表すと、下の図の様になります。
そして、一つの溶接線の長さ(溶接長)は、鋼管の「せい」をW、肉厚を t とすると、BCR材では以下の式で溶接長が計算できます。式の内容はせいの中から直線部分を取り出して、そこにR部の円周の1/4を加えています。
L = W – 2(2.5t)+2(2.5t)π÷4
同様に、BCP材の場合は
L = W – 2(3.5t)+2(3.5t)π÷4
ちなみにBCRやBCPの角部は曲面なのでR部と言ったりします。
次に、このR部の内部欠陥の長さですが、平面部であれば探触子を動かしてきずエコーがL線を超える範囲の長さがそのまま指示長さとなりますが、R部ではそうはいきません。
あくまで、測定できるのは表面での移動量ですから、真の値はきずの深さを加味して計算しないといけません。
表面での探触子の移動距離(Lp)と内部欠陥の真の長さ(lp)は同心円上の関係にあるはずですから、きずが深いところ(曲率の中心に近いところ)にあればその分だげ(探触子の移動距離に比べて)小さくなります。ですから、UT結果は探触子の移動距離から計算しなくてはいけません。
BCR材であれば
Lp / l p= 2.5t × 2π ÷ {( 2.5t – d) × 2π}
が成り立ちますから、この式を変形して「 lp 」を求める形にすると、
lp= Lp × {1-( d / 2.5t )}
となります。
ここで「 d 」は探傷器から得られるきず深さ、「 t 」はBCR材の肉厚です。
同様にBCPであれば
lp= Lp × {1-( d / 3.5t )}
となります。
例題として、BCR-300×12から作成した角型鋼管柱の溶接長とR部の内部欠陥の長さの計算をしてみます。
【例題】BCR-300×12の角型鋼管柱のR部に内部欠陥を検出した。欠陥の深さは10mm、探触子の移動距離は20mmだった。欠陥の合否は問わず、欠陥の実際の長さを計算しなさい。また検査部の溶接長はいくらか。
【回答】BCRなのできずの長さは
lp = 20 × { 1 – (10 / 2.5×12)}
= 13.3 mm
溶接長は
L=300 – 2 × 2.5 × 12+2 × 2.5 × 12×π÷4
= 287mm
こうして求めた溶接長と、きず長さは角型鋼管柱のUTでのデータとして必要になってきます。