年前はバリニオンの定理まででした。そのあと、自分の忘備録として断面二次モーメントについて書いてしまって、その4を放置していました。すみません。
と言うわけで、「鉄骨製作管理技術者1級受けてみた」を再開します。
再開1発目は「トラス」についてです。鉄骨製作管理技術者の構造力学で取り上げられるトラス問題は、材にかかる力が圧縮力か引張力かを判断するものです。
大前提は力が釣り合っている状態であること。つまり構造物が静止して形が維持されている状態だということです。
さらに簡単のため、平面であるということ。
以上のことから力は水平方向と垂直方向、そしてモーメントの3つだけです。
力が釣り合っている場合、水平方向の力の総和、垂直方向の力の総和、モーメントの総和はすべて０になります。数式で表すと以下の通りです。
$$\begin{split}&\sum{H}=0・・・(水平方向）\\ \\&\sum{V}=0・・・（垂直方向）\\ \\&\sum{M}=0・・・（モーメント）\end{split}$$
上の図のようなトラスを考えてみましょう。
ここで作用している外力はC点に水平方向の力100kNだけです。支点はピン支点のAとローラー支点のBになります。
外力に対する反力は、この場合ローラー支点Bには水平方向の反力は生じないので、ピン支点Aに作用するHAだけです。垂直反力はピン支点A、ローラー支点Bの両方に作用するので、VAとVBです。
これを数式にすると
$$\begin{split}&H_A-100[kN]=0\\&H_A=100[kN]\end{split}$$
$$V_A+V_B=0$$
次にモーメントのつり合いですが、今回は支点Aを基点にして考えると、$$M_B+M_C=0$$
$$\begin{split}M_B&=-2×V_B\\ M_C&=100×2\\ -2V_B+200&=0\end{split}$$
$$\begin{split}V_B&=100[kN]\\V_A&=-100[kN]\end{split}$$
VAの符号が-なので向きは上の図の反対（下向き）になります。反力の大きさと向きを先ほどの図に書き加えます。
反力を書き込んだら、それぞれの点についてみていきます。
点Cには外力Pがかかっています。外力Pの作用している先にはCD材があるので、Pはこの材を伝わって点Dに水平に作用します。一方、AC材はPの作用方向とは直角なので軸力は作用しません。
点Dには水平方向には先述した通り、CD材を伝わってきたPが作用しています。また垂直方向には反力VBがBD材を伝わって作用しています。点D周りには斜め材ADに赤色の矢印のような力が作用していることが分かります。
点Bを見ると、反力VBの作用する先にはBD材があるので、赤い矢印の力が作用しています。水平方向については、ローラー支点なので力は作用しません。
点Aでは、Pに対する水平反力HA、垂直反力VAが作用しているので示力図を書くと赤い矢印の力が斜めのAD材に作用しています。
こうすると、CD材、BD材に圧縮力（－と表記します←ルールです）、AD材に引張力（＋と表記）、AB材とAC材には力は作用していない（０と表記）ことが分かります。
では、下の図の様に斜め材の取り付け方向だけを変えた場合はどうでしょうか。反力は上の場合とは変わらないので、あらかじめ書き込んであります。
点Cには水平方向に外力Pが作用しているのは同じです。垂直方向については反力VAがAC材を伝わって、点Cに対して下向きに作用しています。そうすると斜め材には下の図の緑色の線で示した力①が作用していることが分かります。
点Dには外力PがCD材を伝わってきますが、その先には何もないので、のれんに腕押しで、水平方向には力は作用しません。Pの作用方向と垂直のBD材もPとは無関係になり、力は作用しません。
点Bについて垂直方向の反力VB、BC材からは力①に対抗して力②が作用しています（力②が無ければBC材は力①の矢印方向に飛んで行ってしまいます）。VBと力②とで力の三角形を書けば、力③が作用しているのが分かります。力③については水平反力HAがAB材を伝わって作用しているとも言えます。
点Aについては水平反力HAに対抗する力④と垂直反力VAに対抗する力⑤も作用しています。
すべての力を書き込むと下の図の様になり、水平材CDと垂直材BDには力は作用しておらず（０）、斜め材BCには圧縮力（－）、垂直材ACと水平材ABには引張力（＋）が作用していることが分かります。
鉄骨製作管理技術者1級の試験では力の方向（０：作用しない、ー：圧縮力が作用している、＋：引張力が作用している）を求める問題が出題されますが、大きさまでは要求されません。