以前、「AOQL4%、第6水準って何?」で、AOQLと水準について書きました。
今回は、合否判定について書いていきます。
鉄骨建築物(鋼構造物)の工事において、鉄骨工事の検査の方法は構造設計特記仕様書の鉄骨工事の項に記載されています。
また『公共建築工事標準仕様書(建築工事編)』(←略称は「国交省営繕/こっこうしょうえいぜん」)にあるように建築工事に適用されるのはAOQL2.5%と4%、検査水準が第1~6水準で、この中から、設計監理者がどれを適用するか決定します。
蛇足ですが、他業種の品質管理ではAOQLは2.5%、4%と限定されません。品質不適合がユーザーの安全に重大な影響を及ぼす場合はAOQL1%とか、厳しい検査水準になります。
検査の合否判定ですが、まず社内検査は全数検査ですから、限界許容差を逸脱したものは、すぐに修正または作り直しとなり、再作したものを再検査するだけです。
AOQLが関わるのは、当然ですが「抜き取り検査」です。
国交省営繕において、鉄骨溶接部のロットサイズはAOQL2.5%、第1水準では60ヶ所、AOQL4%、第6水準では220ヶ所と決まっています。また各ロットから抽出する、サンプルサイズはすべてのAOQL,検査水準について20ヶ所と決まっています。
仮に小規模物件で柱が4本で、1つの柱に溶接個所が8ヶ所しかない時はどうなると思いますか?ここで、検査水準はAOQL4%、第6水準とします。
ロットサイズは溶接個所220ヶ所以内で1ロットです。サンプルサイズは20ヶ所です。この物件では全溶接個所は32ヶ所ですから、これで1ロットです。この32ヶ所の中から20箇所を検査します。
では次の場合はどうするのでしょう?
コラム柱に内ダイアが1ヶ所ついている柱が4台あったとします。
一つのロットは同等(製造時期、製造工場、担当者もしくは担当の班などが同じ)品で構成されなくてはいけませんが、内ダイアは柱の他の部分とは全く違う時期に内ダイアだけを溶接するので、内ダイアだけでロットを構成します。
結果、内ダイア1枚について溶接個所は4ヶ所ですから、この場合はロットサイズは16ヶ所です。220以下なので問題ありません。次にサンプルサイズですが、国交省営繕では20ヶ所ですが、どう頑張ってもサンプルサイズは16どまりです。
この場合は、抜き取り検査は適用できないので、この16ヶ所を全て検査します。つまり、「全数検査」とします。
全数検査にはAOQLの適用範囲外ですが、抜き取り検査より確実ですから、これでよしとします。
それでは、次にAOQLを適用した抜き取り検査の合否判定です。
国交省営繕では次の図のように規定されています。
つまり、AOQL 2.5%ではすべての水準について、1つのロットに含まれる不適合ヶ所は1ヶ所まで。AOQL 4%では3ヶ所までが許容範囲となります。
なお、不適合品は合格ロットについても全数検査についても、補修を実施し、再度社内検査を実施し、適合品となっていることを確認しなくてはいけません。
山梨を中心に検査を行なっておりますが、小物件が多いし小さい工場が多いので先にロットを組む事が難しいので30%抜き取りが中心となっております。
鉄骨ファブの社内検査だと、全数検査なのでロットで悩むことはありませんが、如何せん全数なので大変です!
第三者検査では多くの物件が「AOQL4.0%/第6水準」の指示で、抜取率30%というのが心なしか少なくなってきたような気がします。