鋼構造建築物の建築現場では、ハイテンションボルトの太さを5分(ぶ)とか6分と呼ぶことがよくあります。
ただ、図面ではあくまでボルト太さ(外径)はミリ表記なので、経験の浅いころは、5分のボルトが何ミリのボルトなのかすぐにわかりませんでした。
その「分(ぶ)」ですが、寸の10分の1にあたります。10分で1寸になります。
太さが12mmのボルトを4分、20mmを6分と言ったりするのは、インチの導入に端を発します。
現在も、日本ではインチやポンドは非常に馴染みの薄い単位です。しかも厄介なことに12進数をベースにしています。現在使われているメートルやグラムは10進数です。日本ではなんでも10進数です。
例えば、1000分の1メートルで1ミリ、1000メートルで1キロですが、インチの世界では12インチで1フィート、12分の1インチで1ラインとなります。17フィートをインチで表すと204インチです。
更に、従来日本で使われてきた長さの単位は「寸」です。ミリで表すと1寸=30.3mmで、1分=3.03mmです。一方、1’’(インチ)=25.4mm、1’’’(ライン)=2.12mmであまり似た数字ではありません。
ところが誰が思いついたか1/8’’=3.18mmで、だいぶ 1分 に寄せることができました。3.03mmと3.18mmだと0.15mmの差がありますが、まぁ、目をつぶることはできるでしょう。
そこで日本では「〇/8インチ」というのが使われるようになっています。ちなみにインチの国(アメリカやイギリス)では1インチの下は1/2インチ→1/4インチ→1/8インチ→1/16インチ...となっていきます(1/12インチが出てこないのが変ですが)。
つまり1/8インチであれば「1分」、4/8インチであれば「4分」です。
そして、建築現場では12mmを4分、16mmを5分、20mmを6分、22mmを7分と言うことが多いです。でも4/8’’≒13mm、5/8””≒16mm、6/8’’≒19mm、7/8’’≒22mmで1mmの誤差を持つものもあるのです。
素直に「12mmのレンチ」とか「20mmのハイテン」で良いと思うのですが、なぜそこを「四分のレンチ」とか「六分のハイテン」とか言うのでしょうか。
確かに、鉄骨造では設計段階から、すべてがミリ表記です。しかし、土地の広さ等、今でも尺貫法が基本です。結果、胴縁ピッチが455mm(=1尺5寸)だったりします。
つまり、mmで表記されていても、中身は尺や寸なんです。結果としてインチを無理やり尺貫法で近似するということが今でも行われているんですね。でも、規格としてmmだし、特に小数点が付くような半端なサイズでもないから、わざわざ言い換える必要も無いと思いますが。
まぁ、現実として「6分のレンチ持ってる?」とか「7分のナット持ってきて」と言われることも多いので、覚えておいて損はないといったところです。