前回の投稿では、少し言葉足らずな部分がありましたので、その2ということで補則させていただきます。
なお、この記事では前提として、JIS9015-1の通常検査水準Ⅱとします。
抜き取り検査では最初にロット、ロットサイズ(ロットを構成する品数)を決めますが、その際、製造過程を十分に把握、理解している者が構成しなくてはなりません。
例えば、組立担当者は誰か、溶接担当者は誰か、使用した溶接ロボットはどれか、製造した時期はいつか、材質と形状は類似のものかなどなどを加味しますが、よほど大規模でなければロットを構成する品数300に及ばないことが殆どであって、結果的にロットサイズはまちまちになることが多いでしょう。小規模な案件であれば、全主柱で1ロット、間柱で1ロット、大梁で1ロット、小梁で1ロット...という具合でしょうか。
次に、ロットサイズが決まれば、そのロットに対するサンプルサイズ(ロットから抜き取るサンプルの品数)がJIS Z 9015-1 の付表2-Aに書かれています。
例えば、工程第1週目に作られたC1柱(ロ-400x400x12/BCR295)が6台、同第2週目に作られたC2柱(ロ-300x300x12/BCR295)が18台、工程第3、4週目に作られたP間柱(H-250x250x9x14)が48台あったとし、組立担当者、溶接担当者はそれぞれ同じとします。
工場長はこのことから、C1は6台で1ロット、C2は18台で1ロット、Pは48台で1ロットとしたとします。そうすると、この時のサンプルサイズは付表-1と付表2-AからC1ロットでは2台、C2ロットは5台、Pは8台ですから、抜取り率で言えば、17~34%になります。
ちなみにロットの合否判定はJASS6では管理許容差を超えるものが5%以下、限界許容差を超えるものが0%以下(←限界許容差を超える物は認めない)なので付表2-AのAQL 4 (5%は無いので。4~6.5の範囲で計算しても少数値になるので4%を使うのが合理的です)の列を使います。
付表2-AをみるとAQL>100という領域があることに気が付きますが、AQL=100%で、全サンプル不適合であるのだから、150%とかありえないと感じるのが普通だと思います。
確かに、建築鉄骨の寸法精度検査では、1サンプルにおける欠陥の箇所数が1か所であっても2か所であっても、そのサンプルは不適合ですので、100%以下(最大でも100%)にしかなりません。超音波探傷試験においても、1台の柱に不合格欠陥が1か所あっても、2か所あっても、欠陥の箇所によらず1か所でもあればその柱は不適合となるのでやはり100%以下の値しか取り得ません。
しかし、JIS Z 9015は建築にだけ適用されるものではないということと、AQLは「100単位あたり」の不適合数にも適用するので、例えば、ロール紙などの場合に1単位を100mとし、判定基準を100mのサンプルに欠点数が250か所以下とするなら、付表2-AのAQL 250 の列を見るという事です。
ここで話を戻します。JIS Z 9015-1でロットサイズとサンプルサイズを求めて、抽出率を計算すると前述のようにロットによって抜取り率は変わってきます。
現在では特記仕様書にはAOQLもしくは抜取り率30%がメジャーですが、個人的には抜き取り率は「JIS Z 9015-1:2006 なみ検査の1回抜き取り方式による」でも差し障りは無いと思います。
実際、過去に公共工事において特記仕様書に「さび止め塗装の膜厚検査は抜き取り検査で良い」とあるだけで抽出率も抽出方法(根拠)の記載も無い案件がありました。その時は「JIS Z 9015-1:2006 なみ検査の1回抜き取り方式による」として監理官に納得してもらったことがあります。