今回は、実際の試験には出題されなませんが、便利なコツを書いてみます。
UT2の実技試験では直射エコーと1回反射エコーの両方でデータを取る課題が与えられます。
注意すべきはビーム路程が短いからといって、必ず直射エコーのほうが1回反射エコーより大きく現れるのかと言えば、きずの方向によっては1回反射エコーの方が格段に大きく現れることもあるということ。
なので、予備探傷によって小さなエコーでも、直射エコーを確認したときは、X(溶接線始端からの)位置をそのままにキープして探触子をまっすぐ後ろに移動させて1回反射エコーが出るかどうかを見る必要が生じます。そして、1回反射エコーが現れなければ、小さな直射エコーと思われるエコーは判定の対象外と判断できます。
しかし、ただやみくもにその操作をしても余裕の無い持ち時間をただ浪費するだけです。
対策として、直射エコーと1回反射エコーとの y(探触子-きず距離)の差(ここではΔyと表します)の標準的な値を予め求めておけば効率的に探傷作業が進めることができます。
もう一つ忘れてはいけない事は、きずが底の直上とかにある時は直射エコーと1回反射エコーを間違いやすいということ。なので、直射でのビーム路程の最大値を予め知っておくことが大事です。ビーム路程をW、板厚をt、屈折角をθとすると、
cosθ=W0.5/t
W0.5=tcosθ
つまり超音波反射エコーが表れたとき探傷機に表示される路程長 W が
W0.5≧W であれば直射エコー
W0.5>W≧2×W0.5 であれは1回反射エコー
2×W0.5>W≧3×W0.5 であれば2回反射エコー ということになります。
つぎに Δy を求める方法です。
下の図を見てください。
例えば、標準として底から1mmの位置にあるきずを想定します。
直射での超音波ビーム路程(AB)、〃探触子-きず距離(BC)、〃きず深さ(CA)と一回反射でのビーム路程(A’B’)、〃探触子-きず距離(B’C’)、〃きず深さ(C’A’)が描かれています。
当然、⊿ABCと⊿A’B’C’は相似関係にありますからそれぞれのビーム路程またはきず深さが判れば、探触子-きず距離が決まってきます。
ビーム路程は直射と1回反射では当然変わってきますが、きず深さは直射でも1回反射でも不変です。ですから、きず深さを基にすれば Δy を計算することができるのです。
Δy を計算するにはきずの深さのほかにSTB屈折角の値が必要です。
STB屈折角は探傷機の調整の際に求めているはずです。
次式で標準的な値として、底から1mmの位置にあるきずについて直射エコーと1回反射エコーの Δy1mm を計算します。
Δy1mm =2tanθSTB
1回反射エコーでの y の値を三角関数で算出めるときは、きずを底面のさらに下にあるものと外挿するので、ACとA’C’の差は2mmになります。
同様に底から2mmの位置にきずがあれば
Δy2mm =2×2tanθSTB
底から2.5mmの位置であれは
Δy2.5mm =2.5×2tanθSTB となります。
では、問題です。
STB屈折角が70.5°、板厚25mmの鋼板を探傷したとき、Y=39mm、深さ12mmのところに直射エコーを検出しました。1回反射エコーを検出するには探触子を基準線から何mm付近に移動すれば良いでしょうか。
解答です。
Δy1mm =2tanθSTB
=2×tan(70.5°)=5.64
(25-12)×5.64≒73
39+73=112mm
基準線から112mm付近で1回反射エコーが得られそうです。