「2019年秋期 JIS Z 2305 非破壊試験技術者資格試験」合格しました~!! \(^o^)/
↑送られてきた結果通知書
採点結果「実技試験〇」!!
「非破壊検査」というのは、試験体を破壊することなく、内部の欠陥の有無を検査することですが、鉄工の分野では鋼材の内部欠陥や、溶接部の内部欠陥の有無を調べることは必須です。特に、弊社の様な建築鉄骨を製作する場合は、後者の溶接部の内部欠陥の検査がメインとなります。この検査をするための代表的な資格がUT(Ultrasonic Testing)です。
今回は、資格試験対策として自分の経験から「最後の手段」について書かせてもらいます。
正直に言いますと、この資格、2回目の実技試験で、やっと合格しました。学科は1回で合格したのですが、前回の実技試験は不合格でした。「落ちちゃいました」は恰好悪いので隠ぺいしたというわけ。でも今回、こうした記事を書くネタになったので勘弁してください。
非破壊試験技術者の試験は一次試験と二次試験の二本立てです。
レベル1,2の一次試験は学科試験です。学科は基礎分野と専門分野の両方とも70%以上の正解で合格となります。その後、二次の実技試験を受験して、合格しなくては資格は得られません。
正直、学科試験は「問題集を5、6回解く」、「問題に出てくるJISの概略をテキスト後ろの一覧表を見てポイントを抑える」をやっておけば合格できると思います。
問題集や講習会で貰う練習問題をもとに試験時間の2/3程度で全ての問題を解答し、残りの1/3を使って再度見直しできるようにしておくべきです。
問題の中には「引っかけ問題」もあるので、見直しは必要です。実際「オッと、これ間違ってるじゃん」ていうのが2、3問見つかりました。時間的な余裕が持てればリラックスして見直すことができるので、当初の勘違いに気が付きます。あと、答が分からずに飛ばした問題も、残り時間でじっくり取り組むと「あれ?ほかの問題にヒント書いてなかった?」ていうこともあります。
ですから学科試験では、問題を全て解けたと思っても、試験時間いっぱい何度も見直すことにしています。
やはり関門は実技試験だと思います。
実技試験は
●機器の調整が基本通りにできるか
●探傷(内部のきずを探ること)操作が基本通りにできるか
●きずのデータの処理が基本通りにできるか
が大切だと思います。
試験内容は、
(1)15分以内に、垂直探傷に係る機器の調整をし、ブラスト処理された板材の2つのきず(重きずと中または軽きず)を垂直探傷する
(2)40分以内に、射角探傷に係る機器の調整をし、DAC線を作成したうえで、圧延肌のT接手の2つのきずを斜角探傷する(2つのきずの内一つは直射と1回反射の両方でデータを採るので、トータル3組のデータを採る)
(3)30分以内に、DAC線を作成したうえで、ブラスト処理された曲面材の2つのきずを斜角探傷する
(4)上記の(1)~(3)のデータを45分以内に整理して答案用紙のマークシートを作成する
です。
各試験時間は、与えられた課題をこなすには最低限必要な時間しかなく、全てのデータを採取して残り時間が2~3分程度と時間的な余裕は殆どありません。
特に斜角探傷では
○機器の校正を行い記録をとる
○DAC線を作成する
をしたうえで
①ビーム路程「W」
②最大エコー高さでの探触子位置「Xp」
③〃「Yp」
④探触子-きず距離「y」
⑤基準からのずれ「k」
⑥深さ「d」
⑦きずの始端「Xs」
⑧きずの終端「Xe」
⑨きずの指示長さ「ℓ」
⑩領域
⑪エコー高さ
⑫分類
⑬合否
の⑬項目を埋めていかなくてはなりません。しかも、きずは直射と1回反射でデータを採って、そのどちらを採用するか判断しなくてはなりません。
このように、時間内にこなさなければいけない課題がとても多く、ぶっつけ本番で臨んで合格するのは多分無理。事前の実技講習会は絶対に受けるべきです。
練習ではバッチリ、自信もバッチリであっても、いざ本試験となると「あれ?、どして?」となることがあります。ですから、
・垂直探傷では5分程度で機器の調整を終わらせる
・射角探傷では5分程度で機器を調整し、5分程度でDAC線の作成を終わらせる
ことが出来るようにしておくことは必須です(あくまで私見ですけど)。そうすることで、きずの探傷に(予備探傷も含め)より多くの時間を充てることができます。
また、コツとして、飽くまで「資格試験」なので、領域Ⅰの小さいきずは答えでは無いハズと割り切って、もし見つけてもデータ採りは後回しにしたほうが良いです。T接手や曲面材の試験体の中には、非常に小さい3つ目のきずがあったり、1回反射で検出するきずが接近限界距離近辺で直射で小さなエコーとして見られることもあります。ただ、そこに時間を割いてしまうと正解となるデータを採る時間が無くなります。予備探傷で直射と1回反射の領域をざっと観察し、二つのきずの大体の位置を見つけてから、正確なデータを採るようにするのが良いと思います。
練習を繰り返し、落ち着いて取り組めば、持ち時間で上記の13のデータを拾う時間は十分にあります(余裕はないけど)。
ただ、ぎりぎりの持ち時間ですから、どっかで躓くと「うぉー、時間が足りない!ヤバイよ!ヤバイよ~!」、となるかと思います。そんなタイミングで静かに響く試験員の「あと、残り時間3分です…」という声は、
↑↑↑感に拍車をかけてきます。しかも手はグリセリンペーストでべとべと(これがデータシートに付くと字が書けなくなったり、消しゴムで消せなくなったりするんです)。
そこでもし、こうなってしまった場合の「最後の手段」を参考まで伝授します(自分の場合、1回目の実技試験ではT接手の斜角探傷でこうなったので、射角探傷について書いておきます)。ただし、きずは見つかっていて、あとはデータを採取するだけという段階になっていないと無理ですが...
データシートに記入する項目は、上述した通り13項目もあります。でも、この中で「絶対にはずせないデータ」は13のうちの5つです。
それは
①ビーム路程「W」
③溶接基準線からの探触子位置「Yp」
⑦きずの始端「Xs」
⑧きずの終端「Xe」
⑪エコー高さ
です。
最悪、残り3分でこの5つさえ拾っておけば、データ整理と答案マークシート作成の45分間に空欄を埋めていくことは、なんとか可能です。
じゃ、どうやって?
機器の調整段階でSTB屈折角と入射点は分かっているハズ。それぞれの試験体の板厚も分かっています(たしかNDT指示書か何かに記載してあったかな)。
そしてデジタル探傷機はビーム路程とSTB屈折、板厚から深さや探触子-きず距離を計算して画面に表示しています。
この機械が計算している部分を人間がやればいいんです。
あと、「きず指示長さ」や「基準線からの探触子距離」はどうしても人間が直尺で実測しなくては得られない数値です。そのために絶対必要なデータが上述の5つとなります。
それぞれの計算方法は、自分で考えてみてください。そんなに難しくはありません。
こうして、何とかデータシートの空欄と、答案マークシートを埋めていきます。こういう方法は実務ではよく使います。ただ、資格試験では実際の探傷操作をしながら13項目を埋めていけるかが問われているのですし、試験員もそれができるかどうかを見ています。ですから、データ整理の時に計算しているのを見られて不合格になる可能性もあると思います。
この方法は、データシートが空欄のまま、むざむざ不合格になるくらいなら、「これくらいはやっておけ」というものですから、決してお薦めできるものではないことを理解してくださいね。
蛇足ながら、経験しないに越したことはないけど、最後の「きず」のデータが全然採り終わっていないのに「あと、残り3分です」が聞こえると、精神的に「来る」よ。150mmの直尺を持つ手がフルフルするし、記録の文字がヨレヨレになるから(←マジ)。